『ピカピカのぎろちょん』 佐野美津男
ネタバレがあるので、ご注意を。
名作が多く、波乱万丈な人生ゆえか、洞察も深い作品を書く佐野美津男。
手に入るものはできるだけ読んだが、どの作品も面白かった。
とにかく、えげつないものもきちんと書く胆力と筆力のある作家。
今の児童書界隈では少ないタイプの作品かもしれない。
で、『ピカピカのぎろちょん』である。
おそらく、当時この本が作られた時は、小学校5、6年生向けを想定したんだろうなと思うが、当時も今も大人が読んでも遜色のない深みと面白さがある、と思う。
心に残ったのが、ギロチンで処刑する大人を真似して、「アタイ」(主人公)が、空き缶などで「ぎろちょん」を作り、子どもたちで、野菜を嫌いな人間に見立てて斬首していくところ。
ピロピロが起きて世の中が変わる、という展開など、当時の革命思想や世相を反映しているなと思うが、どれだけ社会のリアリティを背負っているかは、問題ではない。
世の中が変わったから、フランス革命のような斬首による交代劇が生じ、それに伴って「大人が隠したいきな臭いこと」が生じたように思えるが、本書で印象に残ったのはそれではない。
戦争を経験し、地獄の戦後孤児を生き抜いた佐野氏にとって、「世の中が変わる」ことは、本当にあった当然の日常の一部であって、敏感に想像の神経を張り巡らし、創造力を発揮するテーマではない。
ここで描かれていることは、大人はいつも世界を隠蔽したがり、子どもは不気味なまでの力で、それを知ろうとしている、ということである。
最後、アタイは、壁に囲まれた大人の世界を、なんとしてでも知ろうと思った、と書かれている。
審判を下すのは、常に子どもなのだ。