くもり空の形而上学

ジャパンカルチャーや茶道、日常のことなど雑多に書きます

Big sur が重い。 そんな方は、こうすればよいかも。

どうも。Fです。

 

職場で最新のソフトに対応する都合で、

macのosをBig sur にしたのですが、とにかく重い。

仕事にならないレベル。マジクソ。激重。

メールアプリ起動までに、(体感)5分。

メールを認識して表示されるまでに、(体感)10分。

日本語の入力をしている時に、回る風車。エンドレス。

そして、フリーズした後、シャットダウン(これは本当)。

 

私のパソコンは、2017年に購入したiMac で、別にスペック上は問題ないはず。

一体何がいけないのかと、クリーンインストールを含め、

ネットに見られるものは全て試したが、どれも効果はイマイチ。

 

ところが、Sensei というサードパーティのソフトを体験版で使用して、

どうもハードディスクの読み込みが遅すぎることが判明してから、

私の中で、理屈が通ったのだった。

 

 

このパソコンは、新しいフォーマット形式のAPFS以前に発売されている。

対応しているフォーマット形式は、せいぜい「ジャーナリング」のはず。

ところが、Big surは、デフォルトで、「 APFS」を指定してくる。

 

 

あまりにも仕事にならないので、HDDが壊れたのかと思ったこともあり、

SSDiMacを分解して換装したのだが、その時に、

いや待てよ、フォーマット形式がいかんのでは無いかと重い、「ジャーナリング」で、

フォーマットして、新しくBig surをインストールしたわけ。

 

そうすると、何も問題なく使えたんですよ。

いや、フォーマット形式が違えば、そりゃトラブル起こるよね、と。

 

Big sur にへきえきしてクリーンインストールを試そうとしているあなた。

フォーマット形式を変えてみるのは手かもしれません。

私の体験しかまだ情報がないので、同様の結果になった方は、

ぜひコメントください。

私自身が苦労したこともあり、みなさまの一助になればと思っています。

 

(メモ書き程度なので、必要に応じて更新します。)

 

 

 

 

 

編集者の心構え 開高健の「編集者マグナ・カルタ 9章」によせて

こんばんは。Fです。

 

尊敬し、恐れ多くも少しでも近づきたいと思っている編集者がいます。

Kさんとしましょう。

彼が、心に留めている言葉として、「森羅万象に多情多恨たれ」という開高健の「編集者マグナ・カルタ」に出てくる文章を挙げていました。「知ってる!」と思って、嬉しくなったものです。

 

このマグナカルタは、9の文章からできています。

1は、「読め」。

おそらくよく知られている5は「トラブルを歓迎しろ」。

そして最後の9が、「森羅万象に多情多恨たれ」なのです。

 

どの項目も、アンテナを全開にして、情熱を持って突き進め、という文言に要約されると思うのですが、動物好きのKさんを通すと、「森羅万象に多情多恨たれ」という言葉は、それ以上の力があるように思い、強く印象に残りました。

 

なぜこの言葉がマグナカルタの最後に出てくるのでしょう。

私には、確かなことは何も言えません。

 

しかし、配置からも、これはひとえに、「言いたいことを締めくくる力」を持っているからではないでしょうか。そして、「締めくくる力」を持つのは、最後のその先をちゃんと描くことができるからだと思うのです。

「いろいろ情報を集めなさい」という教えを超えた意味を、開高健はきっとこの言葉に託すことができたのではないでしょうか。

 

私は、正直、この9番目の言葉にいまいちピンときていませんでした。

いろんなものに同情し、共感し、たくさんのことを知って、正しく必要だと思う情報をまとめて発信するのが、編集者の役割なんだろうな、そのくらいのことしか考えてなかったのです。

 

先日、夕暮れ時の庭先に、白くてほんの小さな見えないくらいのつぶの虫を見かけました。

都会で生活している分には、普段は全く目に入らないであろう虫です。それくらい小さくて、タバコの燃えきらない灰のようでした。

 

こんな小さな虫でも、細胞が体を構成し、羽ばたき、パートナーを探して、そして新たな命を紡ぐんだろうなと、なぜだか感じさせられました。それがとてもありがたいことに思えました。彼らのような命が懸命に次世代を作ってくれるからこそ、めぐり巡って、私たちも生きていくことができるのは間違いありません。

 

それから、なんとなく気になって調べました。コナジラミでした。

 

害虫であるコナジラミを知った上で探そうとしても、きっと私は気づかなかったと思います。

そう思うと、彼らに気づくことができたのは、「森羅万象に多情多恨たれ」というKさんの言葉が心に残っていたからではと、ハッとしました。


押してからでないとわからない、トラップのようなスイッチなのです。
 

飛躍するとは思いますが、開高健の最後の文は、何か役に立つことなどではなく、森羅万象に生きることを気づかせるスイッチに過ぎないし、そのスイッチこそ、最も大切な物のひとつ、と考え、それについて言及したのではないかな、と思ったわけです。

闇雲に、気になる動物の保護で共感を満たすわけでもないのだな、と。

 

もちろん、いろいろな読み方があった方が楽しいので、これも単なる一つの意見に過ぎないと思っています。

 

ただ、このスイッチを与えたいと開高健が思ったのなら、それはささやかでも成功したのではないかと思うのです。

 

Kさんが、目に涙をたたえながら生き物の話をするときなんか、特に。

そして、夕暮れに消えていった、美しくもあまりにも小さな、白い命の影に。

 

『ふわふわの泉』は最高の小説のひとつ

こんばんは。Fデス。

 

皆さんは、サマセット・モームの、『世界の十大小説』をご覧になったことがありますか。岩波文庫だと、これだけで上下巻に分かれており、それだけでも読むのは大変です。この本を読んださきに、さらに10作品も読むなんて、それはまあ、気が遠くなりますよね。

 

でも、うぶな青年だった私は、がんばって全部読みましたよ。もちろん、『戦争と平和』も『デイビット・コパフィールド』も『白鯨』も。ぜんぶ。ちなみに、それだけでなく、『アラビアンナイト』『西遊記』『紅楼夢』『イリアス』『ファウスト』などなど、岩波文庫の赤は、当時、ぜんぶ読むぞと気合を入れて、手に入るものうち、がんばって半分は読みましたよ。青春です。

 

長い読書人生の中でも、歯並びが変わるんじゃないかっていうほど、歯を食いしばって読んだ本は、ヘーゲルの『精神現象学』と、メルヴィルの『白鯨』なんですが、まあ〜、『戦争と平和』も、生まれて初めて読書ノートつけるぐらい、難しかったです。

なのに、モームの10本の選定基準が、「小説は楽しくね!(キャピッ)」ということらしいので、隔世の感です。『白鯨』面白かったの……? まじで……?

 

モームが選んだ中では、『カラマーゾフの兄弟』が、熱中して読めました。ま〜、ドストエフスキー大好きですという補正もあります。ちなみに、私なら『戦争と平和』の代わりに、『アンナ・カレーニナ』か『復活』を入れます。

 

さて何が言いたいかというと、ランキングって、つまりは、何かをガイドするときに、不思議とマウンティングが行われていて、お勧めしやしく便利なわけです。だって、『白鯨』読んじゃうくらいだもん。

 

で、今回、できたらランキング力にあやかりたいなと。

 

わかってますよ。私がお勧めする十大小説なんて、誰も興味がないと思いますが、開き直って、選びたいんです。そのための前置きなんだから!

 

さて、選ぶとなると、ドスト氏の『罪と罰』、川端康成の『山の音』と並んで、野尻抱介の『ふわふわの泉』が入るんです。

 

この本の素晴らしいところを、簡単にまとめますので、グッときた方は、ぜひ読んでください。

 

ふわふわの泉

ふわふわの泉

 

 

ニコニコ動画もなくジェンダーバイアスも強かった時代に、理系女子高生が、「ふわふわ生きたい」「無駄な努力はしたくない」と、主張し、物語の根幹にできたこと

 

9・11のあの時代に先駆けて、「異世界との出会い」を問題意識にしていたこと

③重力を振り切る描写の、あまりの美しさ

 

そして、何より、人類がもつ普遍的な不安への回答が、冷たく輝く大気を切り裂いて、飛び出た宇宙からもたらされた、その光景、なんです。

 

この本については、地球外生命体との出会いが不要ではという批判もあるのですが、それは局所的な解釈だと思います。野尻氏は一貫した、「宇宙に人類の問題を持っていって考える」ために、「他者」との出会いを必要としたのです。

 

野尻氏は、ストーリーテラーであると同時に、氏が見つけた「真理」を作品の中心に据えます。その「真理」が、分かりやすいのですが、非常に哲学的なんですよね。ネタばれしたくないので、あまり言えないのですが。

 

皆さんも、『ふわふわの泉』の主人公が、最後、なぜ心から笑ったのか、そして人類の希望は、何に立脚しているのか、考えていただければ幸いです。

 

読みやすく、奥が深い名作であること、間違いありません。お勧めします。

『女の子は本当にピンクが好きなのか』を読んだら分かりみがすごかった。

こんばんは。Fです。

 

堀越英美さんの高すぎる文章力が大好きで、『女の子は本当にピンクが好きなのか』を楽しみにしておりました。

買うべきなんでしょうけど、図書館で取り寄せていたんです。で、このご時世だから、つい先日、やっと届いたというわけ。

書影のために、Amazonのリンク載せておきますね。

 

貪るように読んだのですが、期待を超えて、とても面白かった……!!

 

 

以下、簡単に読書メモがてら、まとめます。

 

 

『ピンク・グローバリゼーション』という本が出るくらい、ピンクは人気。

オランダでも、ミッフィーを差し置いて、ピンクのハローキティが大人気。

教えたわけでもないのに、女の子の幼児はピンクを選ぶ。

これはなぜか。

 

原始的な社会では男性が化粧していることもあり、元々ピンクは男性も常用していた。ピンクが女性の色だと認識されたのは、第二次世界大戦以降。

 

ベルサイユ宮殿から始まったピンクブームは、性差を問わず18世紀後半にはヨーロッパ全域に広がった。なお、光源氏もピンクの服を着ている。ヘンリー8世に至っては、ストッキングにハイヒールなどまるでOL。宝石でジャラジャラ飾り付けるなど、貴族の男性がすることだった。

 

1886年ごろ、『小公子』の流行により、王子様ルックの「フォントルロイスーツ」が爆発的ヒット。王子様ルックを強要された男子たちが、「子どもには男らしい服を」と思ったのか、1900年代初頭には、セーラー服と膝丈ズボンが定番になる。

 

ここからしばらくは、フロイトの影響を受けて、男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく育てないと、間違った発達をする、という認識が家庭の中で広まり服装に性差が見られるようになった。だが、ピンクは男女差がある色ではなかった。

 

1950年代はピンクブーム。エルビス・プレスリーもピンクを偏愛。マリリン・モンローもピンクに執着。

マミー・アイゼンハワーは、裕福で幸福な専業主婦のモデルになり、彼女が愛用したピンクは、「マミー・ピンク」と呼ばれるようになった。

戦争中に、ジーンズをはき、リベット工場で働かされた女性たちは、このピンクで豊かな専業主婦像を喜んで受け入れた。ここで、ピンクは女性の色として認識が深まった。

同時に、ピンクは、戦争のカウンターカラーでもあった。愛国心や血生臭さとはほどとおい色なので、どの国の国旗にも、ピンクは存在しない。

 

 

この背景には、帰還兵士の就職先確保のために、女性は専業主婦と政治方針が立てられ、文化的発信を行った作為があった。

人間は家に閉じこもるのは不自然のため、やがて軋轢をうむ。

1963年に主婦の孤独と無力感をかいた『新しい女性の創造』(ベティ・フリーダン)が出版されて話題になる。

1970年代、ウーマンリブの流れが大きくなり、乳児のピンクの玩具をやめて、中性的な色のレゴや、バービーの代わりに積み木を与えるなどの動きが起きた。

 

日本では、ピンクは「桃色」がいかがわしいニュアンスがあるように、子どもの色として受け入れられるのに時間がかかった。1980年代の「魔法の天使クリィーミーマミ」によって、女・子どもの文化にスポットが当たり、ピンクの受容が変化する。

学生運動衰退と好景気に支えられ、アカデミックな文化から、軽薄な文化へ。

 

ただし、ピンクはぶりっこの象徴で、身に付けるのはまだ気恥ずかしいものだった。

1997年、ハローキティのベースカラーがピンクへ変わり、シャイニーピンクのハローキティの財布がコギャルの間で大ヒット。自由で個性的な表現を見に纏うコギャルが象徴するように、可愛さを隠して、純粋無垢でお馬鹿なふりをする文化はなくなった。アイドル像も変化していく。それに伴い、ピンクの使用が開放されていく。

 

2000年代初頭に、ディズニーが王子様を追い出して、ディズニープリンセスを立ち上げると、年3億ドルから、年40億ドルへと大ヒット、急成長する。

 

ピンクを中心とした女児玩具が増える中、2010年前後には、ピンクに対するカウンターカルチャーも出てくる。

 

2008年、ロンドンで、8歳以下の児童に化粧品を売らないように運動が起きる。

 

男女ではっきり遊ぶものを決めないように求めるものだが、アカゲザルに、「車のおもちゃ」「人形」で遊ばせると、オスは車のおもちゃで遊ぶ割合が圧倒的に多く、メスは人形で遊ぶ割合がやや多かった。また、色についても、メスの方が、ピンクをこのむ割合が多かった。これは、赤ちゃんに対する感受性が強いほど、子孫を残すことができたため、その因子が残っているのだろうと言われている。

 

しかしながら、ピンクそのものではなく、社会的な意味に対する批判が強まっていることと、オバマ大統領就任以降、空間把握能力を育てるブロックなどを女児にも遊ばせるようにして、STEM教育(理系教育)を強化するように打ち出されていることから、親のニーズにも大きく変化がある。

 

2012年女の子向けの組み立てキット、ゴールディーブロックス発売。大ヒット。

同時期、「DIYドールハウスキット ルーミネイト」発売。ヒットする。

 

2013年「Think Pink」というファッション展がボストン美術館で開催。

 

と、ここまでが本書の半分くらいまでで、大きなピンク需要の流れ、ファッションの歴史。後半は、ピンクにまつわるジェンダー分析から、女性の社会進出の遅れと、ピンクカルチャーを腑分けしていく。

 

秀逸なのは、女性の貧困と、社会的地位の画一性は、「理系を避けるように発酵がすすんでいる文化」にあるという考察。(「」内の言葉は、私の表現)

 

そのために、いかに女の子でも遊べるブロックやパズルが必要か、考えさせられた。

 

女の子しか育てたことがまだないけど、確かに、女の子は、教えたわけでもないのに、ピンクやドレスが好きで、ファッションにもこだわりがある。その反面で、動物や虫が好きで、車や電車も好きで、特撮ヒーローものも好き。もちろんプリキュアも、ブロックも。かっこいいものも、可愛いものも、結局、なんでも好きなんですよね。

 

子どもをよくみて、興味があることを育てつつ、どんなことでもチャレンジできるようにする、という当たり前の対応が一番なんだと思った次第。

 

 

ところで、娘が、「お父さん、大きくなったら何になりたいの?」と聞いてきたとき、

 

「え、あっ、あ〜、初音ミク……」

 

と答えると、「大丈夫だよ! お父さんなら初音ミクになれるよ! 応援してるよ!」と言われたので、なんか、こういうので、いいんだろうなと思った。

 

『花木荘のひとびと』 高森美由紀

ネタバレも含みます。

 

花木荘のひとびと (集英社オレンジ文庫)

花木荘のひとびと (集英社オレンジ文庫)

 

 

面白かった。

悲劇の書き方がうまいなと思う。こはく、翔、昇平(と葵)、大家が主な登場人物。

 

こはくは物を買うことで心の隙間を埋めるOL。老境に差し掛かった義理の父親の孤独について持て余している。

 

翔は自死した父親の心臓が鳴っていたと勘違いしたことから、止まった律動を動かしたいと願っている、時計屋の青年。

 

昇平は、汚いと言われていじめられていた葵を綺麗にしたいと願い、美容師になった一見チャラい青年。

 

葵はがんを患い、子宮を全摘出した後、乳がんにもなった女性。子ども時代、死んだ子猫を生きていると言って抱きしめ、いじめられた。子猫が生まれ変わっても戻ってこられるように、猫の毛をお守りにして持っている。

 

生きていると受け入れきれない悲しみに襲われるもの。主人公たちは、「髪を切ると気分が変わる」というセリフに象徴されるように、ほんのわずかなきっかけを少しずつ集めて、生きる力を作る大きなきっかけを動かそうとする。

悲劇は不思議にずっしりと重く、しかし読後感はあたたかさが残ってとても良かった。

『想像するちからーーチンパンジーが教えてくれた人間の心』 松沢哲郎

 

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心

 

 人間とは何かがテーマになっている。著者が学生の頃に抱いた疑問だ。それをチンパンジーとの比較から探る。

面白かった発見は、『贈与論』に見られるような群れと群れとの社会関係をチンパンジーは持っていることや、言語能力などを自分の言葉で進化論的に考えていることである。

 

チンパンジーと人は、チンパンジーニホンザルよりも近い関係にある。

他の猿とはアイコンタクトできないが、チンパンジーとはアイコンタクトできる。事務員がつけるようなそでカバーをチンパンジーに渡すと、チンパンジーは腕を通して、また返したそうだ。チンパンジー以外では噛むかたたきつけるか、そういった行動しかとらないらしい。

チンパンジーはある程度の意味把握ができる。そして、チンパンジーはあくびも伝染するほど共感力が高い。新生児のようにチンパンジーの新生児も自然に笑う。

 

チンパンジーの若い雌は群れを出て行くそうである。これは他の部族と婚姻関係を結ぶことで労働の交換をし、血が濃くなることを避けるよう配慮していた人類と通じるものがある。

チンパンジーの寿命は50年。5年に一度子供を産み、雌が一人で育てる。子供は5年間ずっと乳を飲む。もちろん数ヶ月経つと固形物を食べるが、離乳しないのも子育てと群れのバランスに貢献している面があるらしい。

10歳ほどで子供を産めるようになるため、およそ8匹育てることができる。高い乳幼児死亡率を考えても、群れの拡大には十分な人数だと言える。

人間は、子供が成長するまでに時間がかかり、子育てのあいだ妊娠できないとなると、生涯に産める子供が5人ほどになる。そして、乳幼児死亡率を考えると、産める子供の数は2人強になる。これでは群れの維持が難しい。

そういった事情から人間とチンパンジーの差を考えると面白い。ヒトははやく離乳し、たくさん子供を産み、群れ全体で育てる。チンパンジーは離乳が遅く、妊娠できない状態で5年過ごし、一人で育てる。

こういった子育ての特徴もあってか、ヒトの子供は仰向けでおとなしくしているが、チンパンジーはそうではない。足をバタバタさせる。

進化論的観点から子供の違いを下記のようにまとめていた。

1哺乳類 母乳を与える

2霊長類 子が母親にしがみつく

3真猿類 母親が子を抱く

4ホミノイド 互いに見つめ合う

5人間 親子が離れ、子が仰向けで安定していられる

 

なるほどと感じざるを得なかった。

人間とチンパンジーの教育の差は、人間は教えるが、チンパンジーは教えないことにある。チンパンジーの子供はじっと大人を見ている。1年ほど見た後、同じ動作をする。

チンパンジーは言語能力を持つといわれているが、それに対して著者は留保的だ。言葉を本当にシンボルとして覚えているかどうかを判定する実験はなかなか難しいらしい。

色と文字が等価的に結びついているかどうかを調べるために、ストループ効果*1で研究しているが、まだ発展途上のようだ。

著者は様々な角度から人間とは何かという答えを与える。子供を共に育てる、あるいは群れ全体で育てなければ群れが維持できない。そこに人間の特徴がある。また、共感する能力をチンパンジーが持っていたとしても、人間のようには相手が望むことを想像できない。再帰的な想像能力が人間の特徴と言えるだろう。

エピローグとしてチンパンジーの保護活動と、アフリカの緑化について書かれる。「緑の回廊 チンパンジー」で検索すると出てくるらしい。

 

そのほか、チンパンジーは人がかかる病気のほとんどに罹患することが興味深かった。また、心理学の実験で、目はなぜ一つではなく二つか、なぜ縦ではなく横についているのか、というような問いが一見哲学的に見えたとしても、全部経験論的、進化論的に説明できるという著者の話が面白かった。

 

全体的に非常に面白かった。後半になると読みづらい部分も出てくるが、それもまた本作りの想定内だろう。軽い砕けた言葉が使われる箇所があるのも、そういう本作りの狙いだろう。

*1:ストループ効果とは、文字意味と文字色のように同時に目にするふたつの情報が干渉しあう現象。1935年に心理学者ジョン・ストループによって報告されたことからこの名で呼ばれる。

『IKEAモデル』 アンダッシュ・ダルヴィッグ

IKEAモデル―なぜ世界に進出できたのか

IKEAモデル―なぜ世界に進出できたのか

 

仕事の都合で読んだ。仕事が忙しかったのと、翻訳はやはり読みづらく、時間がかかってしまった。

 

・イケアはダイバーシティと社会貢献に取り組むことで、事業が継続できるという。

・44カ国で、12万人以上が働いている。

・採用では経験や実力だけでなく、価値観の共有を重視している。

・貧困の問題に取り組む最良の方法は、イケアのような優良企業が雇用を生み出すこと。

・イケアの方法をサプライヤーに遵守させるため、第三者機関に逸脱していないか世界中のサプライヤーを調査させた。

・イケアは上場企業ではないので、長期的視点に立つことができる。

・長期にわたりオーナーが変わらないので、一貫性が育まれる。

・経営幹部を車内から登用することで安定性が確保され、成功の前提条件が確実に共有される。

発展途上国サプライヤーにおける環境と労働条件に対する懸念は、顧客その他の利害関係の間で高まる一方だったので、社会問題を2000年に前面に押し出し、供給戦略を立てた。

・児童労働に断固として反対している。

・日本のホルムアルデヒドの基準は、参入当時は他の国よりも非常に厳しく、他の国の2分の1だった。

・この本の著者は自由競争を大いに推奨している。

・イケアは非公開企業であり、より正確に言えばオランダの財団。1982年にこの構造が整えられた。創業者イングヴァル・カンプラードは、のちの世代が会社を分割や売却をするリスクを取り除くことで、イケアの将来を保証するため、もうひとつは節税のため。イケアの親会社はインカ・ホールディングBVで、これをスティヒティング・インカ・ファウンデーションが所有し、さらにこれをイケア・ファウンデーションが所有するという構造を持っている。

 

全体的な感想

どのタミングでロシアや中国に進出したか、また各国での参入状況・障壁がよくわかった。アメリカでの成功が話されているが、広く浅い記述のため、ストーリーに感情移入はしづらい。人物伝記というようなものではない。貴重な記録だと思うが、整理されていない印象。分量に比べて繰り返しも多いので、斜め読みでも大丈夫。