くもり空の形而上学

ジャパンカルチャーや茶道のこと、編集者の日常ことなど雑多に書きます

『花木荘のひとびと』 高森美由紀

ネタバレも含みます。

 

花木荘のひとびと (集英社オレンジ文庫)

花木荘のひとびと (集英社オレンジ文庫)

 

 

結構面白かった。

悲劇の書き方がうまいなと思う。こはく、翔、昇平(と葵)、大家が主な登場人物。

 

こはくは物を買うことで心の隙間を埋めるOL。老境に差し掛かった義理の父親の孤独について持て余している。

 

翔は自死した父親の心臓が鳴っていたと勘違いしたことから、止まった律動を動かしたいと願っている、時計屋の青年。

 

昇平は、汚いと言われていじめられていた葵を綺麗にしたいと願い、美容師になった一見チャラい青年。

 

葵はがんを患い、子宮を全摘出した後、乳がんにもなった女性。子ども時代、死んだ子猫を生きていると言って抱きしめ、いじめられた。子猫が生まれ変わっても戻ってこられるように、猫の毛をお守りにして持っている。

 

生きていると受け入れきれない悲しみに襲われるもの。主人公たちは、「髪を切ると気分が変わる」というセリフに象徴されるように、ほんのわずかなきっかけを少しずつ集めて、生きる力を作る大きなきっかけを動かそうとする。

悲劇は不思議にずっしりと重く、しかし読後感はあたたかさが残ってとても良かった。

人物たちが、もう少しうまく互いに影響を与えられたら良かったのに。そこが残念。