くもり空の形而上学

ジャパンカルチャーや茶道、日常のことなど雑多に書きます

『女の子は本当にピンクが好きなのか』を読んだら分かりみがすごかった。

こんばんは。Fです。

 

堀越英美さんの高すぎる文章力が大好きで、『女の子は本当にピンクが好きなのか』を楽しみにしておりました。

買うべきなんでしょうけど、図書館で取り寄せていたんです。で、このご時世だから、つい先日、やっと届いたというわけ。

書影のために、Amazonのリンク載せておきますね。

 

貪るように読んだのですが、期待を超えて、とても面白かった……!!

 

 

以下、簡単に読書メモがてら、まとめます。

 

 

『ピンク・グローバリゼーション』という本が出るくらい、ピンクは人気。

オランダでも、ミッフィーを差し置いて、ピンクのハローキティが大人気。

教えたわけでもないのに、女の子の幼児はピンクを選ぶ。

これはなぜか。

 

原始的な社会では男性が化粧していることもあり、元々ピンクは男性も常用していた。ピンクが女性の色だと認識されたのは、第二次世界大戦以降。

 

ベルサイユ宮殿から始まったピンクブームは、性差を問わず18世紀後半にはヨーロッパ全域に広がった。なお、光源氏もピンクの服を着ている。ヘンリー8世に至っては、ストッキングにハイヒールなどまるでOL。宝石でジャラジャラ飾り付けるなど、貴族の男性がすることだった。

 

1886年ごろ、『小公子』の流行により、王子様ルックの「フォントルロイスーツ」が爆発的ヒット。王子様ルックを強要された男子たちが、「子どもには男らしい服を」と思ったのか、1900年代初頭には、セーラー服と膝丈ズボンが定番になる。

 

ここからしばらくは、フロイトの影響を受けて、男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく育てないと、間違った発達をする、という認識が家庭の中で広まり服装に性差が見られるようになった。だが、ピンクは男女差がある色ではなかった。

 

1950年代はピンクブーム。エルビス・プレスリーもピンクを偏愛。マリリン・モンローもピンクに執着。

マミー・アイゼンハワーは、裕福で幸福な専業主婦のモデルになり、彼女が愛用したピンクは、「マミー・ピンク」と呼ばれるようになった。

戦争中に、ジーンズをはき、リベット工場で働かされた女性たちは、このピンクで豊かな専業主婦像を喜んで受け入れた。ここで、ピンクは女性の色として認識が深まった。

同時に、ピンクは、戦争のカウンターカラーでもあった。愛国心や血生臭さとはほどとおい色なので、どの国の国旗にも、ピンクは存在しない。

 

 

この背景には、帰還兵士の就職先確保のために、女性は専業主婦と政治方針が立てられ、文化的発信を行った作為があった。

人間は家に閉じこもるのは不自然のため、やがて軋轢をうむ。

1963年に主婦の孤独と無力感をかいた『新しい女性の創造』(ベティ・フリーダン)が出版されて話題になる。

1970年代、ウーマンリブの流れが大きくなり、乳児のピンクの玩具をやめて、中性的な色のレゴや、バービーの代わりに積み木を与えるなどの動きが起きた。

 

日本では、ピンクは「桃色」がいかがわしいニュアンスがあるように、子どもの色として受け入れられるのに時間がかかった。1980年代の「魔法の天使クリィーミーマミ」によって、女・子どもの文化にスポットが当たり、ピンクの受容が変化する。

学生運動衰退と好景気に支えられ、アカデミックな文化から、軽薄な文化へ。

 

ただし、ピンクはぶりっこの象徴で、身に付けるのはまだ気恥ずかしいものだった。

1997年、ハローキティのベースカラーがピンクへ変わり、シャイニーピンクのハローキティの財布がコギャルの間で大ヒット。自由で個性的な表現を見に纏うコギャルが象徴するように、可愛さを隠して、純粋無垢でお馬鹿なふりをする文化はなくなった。アイドル像も変化していく。それに伴い、ピンクの使用が開放されていく。

 

2000年代初頭に、ディズニーが王子様を追い出して、ディズニープリンセスを立ち上げると、年3億ドルから、年40億ドルへと大ヒット、急成長する。

 

ピンクを中心とした女児玩具が増える中、2010年前後には、ピンクに対するカウンターカルチャーも出てくる。

 

2008年、ロンドンで、8歳以下の児童に化粧品を売らないように運動が起きる。

 

男女ではっきり遊ぶものを決めないように求めるものだが、アカゲザルに、「車のおもちゃ」「人形」で遊ばせると、オスは車のおもちゃで遊ぶ割合が圧倒的に多く、メスは人形で遊ぶ割合がやや多かった。また、色についても、メスの方が、ピンクをこのむ割合が多かった。これは、赤ちゃんに対する感受性が強いほど、子孫を残すことができたため、その因子が残っているのだろうと言われている。

 

しかしながら、ピンクそのものではなく、社会的な意味に対する批判が強まっていることと、オバマ大統領就任以降、空間把握能力を育てるブロックなどを女児にも遊ばせるようにして、STEM教育(理系教育)を強化するように打ち出されていることから、親のニーズにも大きく変化がある。

 

2012年女の子向けの組み立てキット、ゴールディーブロックス発売。大ヒット。

同時期、「DIYドールハウスキット ルーミネイト」発売。ヒットする。

 

2013年「Think Pink」というファッション展がボストン美術館で開催。

 

と、ここまでが本書の半分くらいまでで、大きなピンク需要の流れ、ファッションの歴史。後半は、ピンクにまつわるジェンダー分析から、女性の社会進出の遅れと、ピンクカルチャーを腑分けしていく。

 

秀逸なのは、女性の貧困と、社会的地位の画一性は、「理系を避けるように発酵がすすんでいる文化」にあるという考察。(「」内の言葉は、私の表現)

 

そのために、いかに女の子でも遊べるブロックやパズルが必要か、考えさせられた。

 

女の子しか育てたことがまだないけど、確かに、女の子は、教えたわけでもないのに、ピンクやドレスが好きで、ファッションにもこだわりがある。その反面で、動物や虫が好きで、車や電車も好きで、特撮ヒーローものも好き。もちろんプリキュアも、ブロックも。かっこいいものも、可愛いものも、結局、なんでも好きなんですよね。

 

子どもをよくみて、興味があることを育てつつ、どんなことでもチャレンジできるようにする、という当たり前の対応が一番なんだと思った次第。

 

 

ところで、娘が、「お父さん、大きくなったら何になりたいの?」と聞いてきたとき、

 

「え、あっ、あ〜、初音ミク……」

 

と答えると、「大丈夫だよ! お父さんなら初音ミクになれるよ! 応援してるよ!」と言われたので、なんか、こういうので、いいんだろうなと思った。