くもり空の形而上学

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『植物は考える』 大場秀章

12月 『植物は考える』 大場秀章  KAWADE夢新書

奥付 1997年9月1日

『皮膚は考える』みたいな本を期待して読んだ。また、植物のことに興味があった。

2時間を何回かに分けて話したものを土台にして本書ができているようだから、少しぎこちないところもあったが、面白く読むことができた。

面白かった話は次のようなもの。

植物が二つ並んで同時に成長していく際、葉が相手にかぶろうとするタイミングで、横に広がるのではなく、より上に伸びるようになる。

葉の影が相互に影響しているのかと一般的には思われるだろうし、自分もそう思ったが、実はそうではなく、葉の影が相手に届く前に、植物は相手からそれるように、そして上に伸びるように成長を始める。

どうやら、緑色の物体を感知し、判断しているらしい。緑色のブロックをとなりにおいても同様の現象が起きることがわかっている。

植物は、細胞一つひとつが目鼻口といった感覚器官の役割をしているのだという。外界を知覚して、コミュニケーションを取ろうとする。その一つが、フィドンチットと物質効果だ。ブルーマウンテンと呼ばれるコーヒーがあるが、これは実際にモヤがかかって青く見える山からきているらしい。このブルーマウンテンは、植物がフィドンチットを出すことによる。新緑がではじめたころ、虫に対抗するために、アルコールが入った物質を放出するのだ。これが人間にはとても心地よいらしい。

そのほかにも、アレロパシーと呼ばれる現象も面白かった。植物も人間と同様、活動すると排泄を行うとでも考えると良いだろう。同じ土地に居続けると、汚染物質が溜まって植物は成長できなくなる。他の植物が生えず、やがて自分も枯れてしまう植物もあるという。生命は不思議だ。日本では雨が多く降るので、比較的この現象は弱いらしい。

ほかにも、アラビアの山に鬱蒼とした森があるという。砂漠にもかかわらず、空気中の水分が結露する場所で、この結露のみで大きな森になっているという。

熱帯のランの話も良かった。このランは、ハチの雌にそっくりな花を咲かせる。雄はそれを実際の雌と錯覚し、花に寄り付いて花粉を運ぶというわけだ。しかもこのランは、たった1種類のアシナガバチしか相手にしないことである。何かの理由でアシナガバチが絶滅したら、このランも絶滅するかもしれない。リスクは大きい。しかし、まるでその擬態はハチを利用するためではなく、花に止まるハチに恋い焦がれた結果のようにさえ思える。虫と植物は確かに関係して進化してきたが、それは結果としてそう見えるだけで、やはり別々に進化している。それが、偶然にお互いを必要とするかのように進化したように見えて面白い。