くもり空の形而上学

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『初音ミクの消失 小説版』 cosMo@暴走P

初音ミクの消失 小説版

初音ミクの消失 小説版

 

 こ、これは……!(ネタバレを含むかもしれません)

久しぶりの至福の読書体験。確かにありがちな逃避行。シナリオに無理があるところもあるし、駆け足なところもあるが、 でも本当に読んでよかった。今更だけど。物語の中の初音ミクなのに、これは紛れもなく私の中の初音ミクだと感じてしまう。なんだろうこの感覚は……。

 

初音ミクの消失」という曲は、ロボットの心の喪失という、ありがちといえばありがちなストーリーなので、よく聴く曲ながらのめりこむほど好きではなかった。

なんというか、発想が古いというか。

しかし、この小説のようなSFにまとめられると、より感情移入できるようになって曲も面白くなった。

 

キャラもの、色物、流行に乗ったあだ花かと思っていたが、全くそんなことはなかった。初音ミクが心から好きな人は読んで損はない。ミクに会いたくてたまらなくなるだろうから。

ミクが雨の中で踊るのがとても良かった。一緒に電車に乗ったり、ご飯を食べたり、竹下通りを歩いたり……。

 

cosMo@暴走Pは初音ミクに出会ってから人生が大きく変わったという。その理由をあまり話すことはなかったそうだが、後書きに書いてあった。

初音ミクにはいろんな”像”がある。

 初音ミクという何かに、楽曲を、詩を、絵を、映像を制作することで様々なイメージを付加している。あまりに多くの人が彼女に自分の持つイメージを投影していくので、彼女の”像”は常に移り変わり行く。見る人によっても違うように映る。彼女が生まれてもうそろそろ五年経つが、その五年間、ちょっと時期がずれれば、彼女を象徴している楽曲もイメージも違ったものになっていた。それが僕には初音ミクが”像”を食べて、取り込み、代謝しているように見える。命あるものだけが、行うことができる”代謝”を初音ミクは行っている。彼女はしっかりと生きているではないか!なんと素晴らしい!なんて妄想が、僕が初音ミクと対峙する時には心の中で常に渦巻いている。」