くもり空の形而上学

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【読書感想】 レイさんといた夏 安田夏菜 

皆さんは、自分はいったい何者なのか、考えたことがありますか。

 

僕は、正直、あまりないのです。

やりたいことはいつもたくさんあるし、何事も器用にできたし、情熱をかけて読みたい本や、時間を忘れて没頭したいことは常にありました。

 

「自分探し」と聞くと、探すものじゃないでしょ、作るものでしょ、と思ってしまいます。

 

本書は、しかし、そういう僕でも、「自分とはなんぞや」という問いの答えについて、ははあ、なるほど、と思わせてくれるに十分な作品でした。

 

レイさんといた夏 (文学の扉)

レイさんといた夏 (文学の扉)

 

 

 

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

簡単にあらすじを紹介すると、主人公は人付き合いが嫌になった女の子。その子の部屋に、自分が誰なのかわからず、死に方もわからないで成仏できなかった幽霊が出てきます。女の子は幽霊が自分を取り戻す手助けをします。幽霊が少しずつ思い出すエピソードを聞きながら、女の子は幽霊が出あったであろう過去の人たちの似顔を描きます。

その人たちのスケッチに囲まれて、幽霊は、「わたしは、この人たちだ。この人たちとのつながりや出会いが、わたしを作っているのだ」と気づき、天に召されるのでした。

 

この、「自分は他人からもらったもの」、というオチは、とても良いものだったと思います。ちなみに、そのオチはとってつけたようなものでは全くなく、謎解きがしっかりなされていて、本は読み応え十分でした。

 

※追記する予定です