【いまさら】山内マリコ 『かわいい結婚』 【レビュー】
世の中の女性のみなさん。既婚女性のみなさん。
どうですか。この本。山内マリコの『かわいい結婚』。
いや、すっごく面白かったんですよ。
あるあると思って読む人多いだろうなと思ったし、文章がうまい。読んで楽しい。
描写に無駄がなく、笑いを取りにいくときもアイデア豊富で、センスがあって、かっこよろしい。
プロの業(ワザ)ですよ。ええ。軽いけど、浅くない。かすったのに、致死。
かつて「恋はボディーブロー」とかいうミュージシャンがいたけど、やっぱり「結婚もボディーブロー」だったのねっていう本だと思いました。じわじわ来ているのがよく書けている。
しかも、よくある「女性って大変だよね」だけじゃない。
例えば、結婚を機に義理の母から、「息子のお世話、よろしくね」と言われて、「なんなんだこれはいったいなぜなのだ」という気持ちを抱いた表現など、とても良い。
ジェンダーとしての女性を通り越して、中性的なところを今の女性は生きているということなのかもしれない。実際、旧世代的な役割分担って、リアリティない人も少なくないと思う。そういうところがよく書けている。
天才ですわ。
天才と評するの、なんだか申し訳ない。才という気が走ってますわ。
ところで、ひとりのしょうもない男性として、私はなんだかもやもやとしています。
amazonかどこかで、「男性の感想を聞きたい」というレビューや感想もちらほら見かけたので、恥ずかしながら、わたくし立候補させてもらいます。書きますよ。
確かに、女の人が男の世話をしなきゃいけない、というのはどうかと思う。
いまだに女性の手作り弁当をめぐって、学生がスッタモンダする、漫画の描写、ありますね。
あれ、すっごく嫌いです。自分が食べたいものは自分で作りなさいよ。
僕、週末に、1週間分の料理を作り置きしております。3〜5時間くらいかけて、10〜15品くらい作る。料理結構得意です。
(唐突に自慢ぶっこんですみません)
作り置き料理に野菜が足りなくなったら、サラダなどをその都度追加する。ドレッシングは「人参、玉ねぎ、しょうが」などをすりおろして保存しているので、栄養満点です。
どんなに忙しい人でも、1週間に1日くらい、休みがあるでしょう。その1日の3時間を料理にあてるなんて、簡単です。
お酒飲んで音楽聴いたり考えごとしながら料理すると、ぶっちゃけ楽しい。だから、男性は料理しましょう。美味しい節約料理を作りましょう。もう一度言います。ぶっちゃけ楽しい。奥さんも助かります。喧嘩も10分の1くらいに減ります。美味しいご飯にはそれくらいの威力があります。
さて、家事や育児や料理などを十分手伝ってくれる男性が増えたとしましょう。
女性の皆さんは、それで、文句ひとつ言わず、「ああ、幸せな毎日だわ」と思うでしょうか。「理解してくれて、一緒にいて楽しくて、真面目に働く。完璧な夫なの。ウフフ」となるでしょうか。
たぶん、それでも不満が出てくるものではないかと思うのです。 人間だもの。
男性だって、不満を持ったり、役割を強制されているように思ったりして、辛いなと思うことがあるでしょう。
しかし、男性って、かなり状況が悪くても、びっくりするくらい能天気だったりしますよね。
「こいついつも幸せそうなツラしてやがんな。悩みないのかテメー」
女性のあなたは、そう思うかもしれない。
そんなとき、男性諸兄は意外とこう思っておる。
「ご飯はカップ麺で、楽しみはニコ生でゲーム実況見ること。一生それでもいい」
ウソみたいだろ。満足なんだぜ。それで……。
つまり、幸せのハードルがけっこう低い。だから、嫌なことがあっても、小さな幸せでごまかすことができるし、あまり不満を感じないのです。
(もちろんみんながそうじゃないよ!)
幸せのハードルが低いのは、男性には謎の安定感があるからではないか。
多分、男性は1ヶ月に何回もホルモンバランスが崩れることがないからではないか。
一生、同じようなホルモンバランスで、謎の安定感にどっかりあぐらをかいている。
この謎の安定感があるから、奥さんが保育園入れなかったらどうしよう、と相談を持ちかけているのに、
「富士山はフィリピンからプレートに乗ってやって来たんだって!
ロマンあるよね! 俺が総理大臣になったら、フィリピンに返そうかな。ワハハ」
とまるで関係のないことを嬉しそうに話すのです。
(上記のようなことを言えるくらいならまだマシだよ!)
でも、こののんきさは、人類が生存する中で必要だったはずなのです。許してやってください。本人は、一所懸命生きているのです。
さて。
山内マリコさんの本の話。
いったい、男性にどのような役割を持ってもらうのが良いのでしょうか。
女性が不満を言わなくなるためにはどうしたらいいのでしょうか。
そんな続編を書いてください。
幸せな結婚生活、夢見たような素敵な結婚生活、きっとどこかにあると信じたいです。